武道に詳しくない方でも空手の正拳突きや、柔道の背負い投げと言えば想像できると思います。でも合気道の代表的な技「一ヶ条」と言ってもよく分からないですよね。知ってる方でもなんとなく相手の力を利用する武道といった感じだと思います。実は合気道は具体的によく分からないと言うのが正解です。
なぜなら最初こそ具体的な型稽古を学びますが、最終的には相手との関係性の中で発揮する力「呼吸力」を学び、技が見た目で判断できないとても抽象的な武道だからです。少し詳しく説明すると自分と相手とのバランスを整える事によって、不思議とお互いが一体化し、相手を容易に誘導できる技術と言えます。バランスを整えるだけだから年齢や性別に関係なくできる武道なんですね。
塩田館長が合気道で一番強い技は何かと聞かれ「殺しに来た相手と友達になること」と述べておりました。
合気道は自己の人格形成した上で、相手との調和を学び、より良い世界にしていく事を目的としております。
個人的には相手を制圧する護身術の方が簡単で、調和を学ぶ型稽古のほうが難易度が高く感じております。
それは普段の生活も同じです。話を移しますが今日ではSNSで自身の主張が攻撃性を帯びたりなどして社会問題になっています。相手より優位に立つことで得られる事はあまりないように感じます。仮に意見が違えど、お互いがより良い方向に進むべき道を妥協せずに調和するのが合気道で、その道は容易ではありません。力の変化だけでなく生活の変化を促すのが合気道の稽古です。
合気道は大体の流派に試合がありません。一般的には「優劣を競わない武道」との回答が多いです。敢えてここでは技術面を見ていきたいと思います。
試合形式の格闘技と合気道の型稽古と言うのは全く異なるものを学んでいます。
試合では相手を倒すことが目的があり、どの様な環境下でも目的を遂行するため、瞬発力、判断力、応用力などが養われます。
一方合気道の型稽古では相手の力を利用する呼吸力を学ぶのですが、この技術はリラックスしていないと学べないため、試合での習得は困難を極めます。
それぞれの良さがありますので何かをベースに、色々と学んでみることをお勧めいたします。
養神館では相手の力を利用する呼吸力を学ぶため、先ず中心線を保つ力を学びます。中心力を鍛える最も基本となる稽古方法が構えです。
中心力を極限にまで高め「一点に集中した力」を集中力と呼びます。触れている箇所から強い力が放たれるため、塩田館長は全身地雷と呼ばれることもありました。
相手との関係性で発揮される集中力を呼吸力と呼びます。心を無にすることで相手の心が鏡のように映し出され、一体感が生まれます。一体化することにより相手を容易に誘導することができます。
一例ですがお互いの身体の遊びを取ってやると、ばらばらだった二つの個体が一つにまとまります。相手に力を出させるエンジンになってもらい、こちらは方向を変えるハンドルになれば意思を持って相手を操作できます。
六本の基本動作があり、単独での稽古と2人1組で行う相対動作があります。人間の動作は進退、回転、重心移動とありますが、中心力を保ったまま動くのは容易ではないため、それらを学びます。また相対動作の場合は力の流れや相手との関係性を学ぶ稽古となります。
合気道特有の体捌きとして入身があります。入身とは相手の死角かつ自分が優位な位置に移動する体捌きのことです。また適切な間合いを学び、相手の攻撃を待たず、相手を誘いながら入る必要があります。澪落とされがちですが相手と触れ合う前の非常に重要な技術です。